Time is gone

 警察に行くことが安全な道で、着いて行くことが危険な道である、それを瞬時に悟った。
 危険と知りながらも、俺は男に着いて行った。警察に捕まりたくなかったわけでも、好奇心が勝ったわけでもない。暴走族時代、警察には何度も捕まっている。いわば慣れていた。それでも男に着いて行ったのは、男の目がそれを強要していたからであり、それだけではなかった。直感がこの男に着いて行くよう、命じたのだ。その直感が正しかったのか、そうでなかったのか、それは死ぬ間際まで分からない。
「スリナンカヨリ、オマエニテキシタ、シゴトアル」
 こうして俺は、空き巣という犯罪に手を染めることとなった。平成のネズミ小僧、伊藤雅樹誕生の瞬間だった。
 それからの日々、空き巣に関する手解きを一から叩き込まれた。今まで一度も捕まったことがないのは、全てその手解きのお陰である。
 俺にとってヤンは、取引先であり、師であり、恩人であった。ヤンに逆らえない最大の理由は、それだ。