自宅に帰り着いた俺は、上着のポケットから五十万の札束を取り出し、テーブルの上に放り投げた。これで二ヶ月間は安泰だ。冷蔵庫から冷えた缶ビールを取り出し、一息で半分ほど流し込んだ。ビールは、豪快に飲むからこそ美味い。
スーツを脱ぎ、丁寧にハンガーに掛けた。商売道具を乱雑に扱うことは、いつかのミスに繋がりかねない。
普段であれば、これで一仕事終えたことになる。だがその日は、そうはいかない。俺は売れ残りの時計を素手で掴んでいた。通常であれば盗品を素手で掴むような真似は絶対にしない。だが、それを素手で掴んでいた。捨てるものと腹を括っていたからかもしれないし、それ以上の何かが、そうさせていたのかもしれない。
「参ったな……どうやって処分しようか。打っ壊して、バラバラにして捨てるか? それとも、錘と共に海に沈ませるか? 第一、何でこんなものを盗んでしまったんだ。いくら純金製とはいえ、ノーブランドでは売れないことくらい、分かっ……」



