もう、わしには必要ない。
 両手でびりびりと破り、細かくなったそれを掌に乗せた。ほど無くして一筋の風が吹き、それらは宙を舞った。
「……綺麗」
 陽子が呟いた。
 紙吹雪は蝶のように舞い、風に乗ってどこまでも飛んで行った。
「この風に乗って、光彦も天国に向かうんじゃ」
 煙突からは、今も一筋の煙が伸びていた。