Time is gone

「ねぇっ、父さんと母さんは? ばあちゃんは?」
 わしは当然の質問に、困惑した。
「……今ちょっと、用事があって出掛けているんじゃ。すぐに、掛け付けてくるさ」
 いつまでも隠しとおすことはできない。分かっていても、今はそうするしかなかった。
「光彦、わしはお前に謝らなければならん。時計のことを信じてやれず、すまんかった」
 深々と頭を下げた。このときのためだけに、わしは生き長らえてきたのだ。
「もしかして……あの時計をじいちゃんも、手にしたの?」
 わしは頷き、骨董品店でたまたま手に入れたことを語った。陽子のことは語らなかった。それを知れば、気まずい思いをするのは光彦だ。
「人生って、不思議だね? たまたまでも、あの時計がじいちゃんの手に渡るなんて。でもよかった、じいちゃんが信じてくれて。あの時計の話をしたのは、じいちゃんだけだから。じいちゃんなら信じてくれるって、信じていたんだ。……今も、持っているの?」
 わしは首を左右に振った。
「わしがドジなばかりに、空き巣に盗まれてしもうたんじゃ……」
 そっか……、そう言った光彦の表情に、口惜しさは微塵も感じられなかった。