Time is gone



 それを奇跡と呼ばず、何と呼べばいいだろうか。奇跡としか言いようがない。緩やかなカーブを描いていた心電図は、一度大きく波打ち、力強いそれに変わった。誰もが歓喜し、抱き合い喜んだ。だが奇跡は、それだけではなかった。
 光彦はゆっくりと、その両目を開いた。
 十年間、誰もが願い、夢にまで見た瞬間が訪れたのだ。
「じいちゃん? ここ、どこ?」
 わしは声を振り絞り、口を開いた。
「病院、じゃよ」
 わしの声は震えていた。辰雄と景子のすすり泣く声が響いた。
「病院? 僕、どうしちゃったの?」
 幼い口調と、二十八歳の成熟した体。そのミスマッチさに、胸が痛んだ。光彦の時は、あの日から止まったままなのだ。
「ちょっとお酒を飲み過ぎて、入院しとったんじゃ。未成年は、お酒を飲んじゃいかんぞ」
「そっか……ごめんね、心配かけて。そこの二人は、親戚の人?」
 光彦の視線は、辰雄と景子に向けられていた。その視線を受けた二人は、呆然と立ち尽くしていた。わしは躊躇いながらも、口を開いた。
「……そうじゃよ。お前のことを心配して、遠くから見舞いにきてくれたんじゃ」
 ありがとうございます、光彦は他人行儀に言った。