Time is gone



 病室に入ると、医師が待ち受けていた。説明など聞かずとも、心電図を見れば全て理解できた。それはアスファルトの上で最後の悪あがきを試みる、ミミズのようだった。
 覚悟はできていた。十年という長い月日をかけ、その覚悟は強固なものへ、強固なものへと洗練されていった。だがそんなものは、目の前の現実に対し、何の意味も持たなかった。
 光彦の生命の灯は今まさに、絶えようとしていた。
 植物化状態人間と化して十年。よくもった。褒めてあげるべきだ。よくがんばった、と。
 欲を言えば、再びその元気な姿を見たかった。四人一緒に暮らしたかった。どこかでそんな淡い希望を抱いていた。いや、抱かなければ今日まで来れなかった。
 だが今目の前に広がる現実は、そんな淡い希望すら打ち砕いた。だからこそ、三人は祈った。
 せめて、せめて最後に、一瞬でもいい、目を覚まして欲しい……、と。