Time is gone

 まぁな……、俺はバツが悪そうに答えた。
 インセンティブといっても、誇れるような額ではない。精々、一万か二万だ。それでも毎月のノルマを達成するだけで精一杯だったのだから、大した進歩だ。
 俺がなぜ、急にインセンティブを貰えるほどに業績を伸ばすことができたのか、その理由は明らかである。友雄から言われた一言に尽きる、お前最近明るくなったよな、これだ。
 営業とは人と人の信頼関係で成り立つ。商品の良し悪し云々よりも、むしろその人の成りによる要素が高い。俺たちのような飛び込み営業ではなおさらだ。陰気で胡散臭い笑顔でインターホンを鳴らしたとしても、門前払いされるのがオチだ。
 だが最近の俺は違う。その笑顔に、負のイメージは微塵も感じられない。それはなぜか、ストレスだ。仕事のストレスから解放されたわけではない。だがその時間はアッと言う間に過ぎて行く。ゆえにストレスの度合いは極端に減った。その分心にゆとりが生まれ、人当たりがよくなっていたのだ。
 時計がもたらした、第二の恩恵。