連日続いた熱帯夜の日々も落ち着き、ゆっくりと秋に向かい始めた九月初旬。寝静まった家の中は突然、その静寂を切り裂かれた。
その犯人は、居間で鳴り響く電話機だった。暗闇の中顔を合わせた三人は、緊張の面持ちでそれを見つめた。時は午前三時。こんな非常識な時間に掛かって来る電話の意味を、三人は十分理解していた。
辰雄が意を決して受話器を取り上げた。景子は、今にも膝から崩れ落ちそうだった。
「もしもし、田中です……」
辰雄の声は、震えていた。
「はい、分かりました。すぐに向かいます」
受話器を置いた辰雄は、準備してくれ、そう言い目を伏せた。とうとうその場に崩れ落ちてしまった景子を無理やり立ち上がらせ、準備するんだ! そう一喝し、寝室へと消えて行った。



