Time is gone



 わしは、日長川辺で釣糸を垂らしていた。何もしなくとも飯は三食でてきて、掃除も洗濯も全て景子がこなしてくれた。やることも、時計も失ってしまったわしは、ただ川辺で釣糸を垂らしていた。
 一日が長かった。歳と共に一日は短くなり、時計が手元にあった頃は、光の如くスピードで月日は流れていった。だが今は、幼少時代のように一日が長かった。
 あの頃と今に違いがあるとすれば、陽が暮れることが恋しいことだ。幼き頃はもっと遊んでいたくて、夕暮れを疎ましくさえ思っていた。それなのに今は、一刻も早く一日が過ぎることを祈るばかりだった。
 きっと人はこうして呆けていくのだ。生き甲斐も、やることも失い。
 水面に反射する陽の光を眺めながら、わしはそんなことばかりを考えていた。実際に呆け始めてしまったのか、ときに幻聴が聞こえるようになっていた。その回数は日に日に増えていった。そしてそれらは全て、わしを呼ぶ光彦の声だった。