「まったくこの忙しいときに、余計なことをしてくれたものだ」
警察による現場検証も終わり、一先ず落ち着きを取り戻したところで、辰雄は愚痴をこぼした。
「お義父さんが無事だっただけ、よかったわよ」
景子は不幸中の幸いとばかりに、それに応えた。
「それはそうだけど、中には金目のものも……」
「いいんじゃ。どうせ売っても大した金にはなりゃせん。中には捨てる手間が省けたものもある。捨てるだけでも金が掛かるんじゃ。それを考えれば、大した被害ではない」
わしの言葉に反論する者はいなかった。「大した被害じゃない」と言ったのは嘘だった。二人をなだめるためだった。被害額は、軽く見積もっても百万は越えていた。
「……父さんがそう言うなら諦めよう。今日は遅いし、明日また頑張るとするか。今日の遅れを取り戻さないとだしな」
「あぁっ、明日も頼む」
気丈に振舞ってはいたが、わしのショックは大きかった。被害額の大きさにではない。売ったり捨てたりしようとしていたものでも、長い年月を掛けて集めた宝物であることに変わりはない。それらとお別れをするにも、ちゃんと見送ってやりたかったのだ。



