Time is gone



 翌日、荷物を整理するために自宅へと向かったわしと景子は、さっそく荷造りを始めた。主に景子は日用品を担当し、わしはコレクションの整理に励んだ。価値のなさそうなものは捨て、価値のあるものは売るための仕分け作業だ。売ってできた金は、全て二人に託すつもりでいた。少しでも、生活費の足しにしてもらうために。
 長い年月を掛けて集めたコレクションを手放すのは惜しかったが、辰雄たちの家に持ち込むことはできない。それらを保管しておく場所がないのだ。一つ一つ手に取り、それらにまつわるエピソードを思い出し、心の中に刻み込んでいった。形はなくなろうとも、思い出は墓場まで持っていくことができる。
 作業は陽が傾くまで続いた。だがまだ半分も終わっていない。大半のものは捨てるため、持って行く荷物は少ない。それでも、老人一人とその予備軍一人の体力では、それが限界だった。
 その晩も自宅に泊まるよう景子は誘ったが、わしはそれを断った。長年住み続けた家を去り行く名残惜しさと、妻と暮らした日々への哀愁を、最後まで味わっていたかったのだ。
 引越し業者も、骨董品の買い取り業者もすでに手配済みだ。この家とも、後数日の付合いとなる。