迎えた六月二十日、俺は目覚めると同時に、時計の針を夜の八時まで進めた。いつもは九時まで進めるが、この日はあえて八時までにした。すると時は光の如くスピードで流れ、パソコンの電源を切る瞬間まで進んだ。我ながらナイスタイミングだった。
俺は帰り支度を始めると共に、同じく帰り支度を始めた友雄に声をかけた。
「どうだ、これから一杯」
「なんだ、真哉から誘ってくるなんて珍しいな。まぁ、俺はOK」
前回同様、旧コマ劇場横の安い居酒屋に移動した俺たちは、これまた前回同様、生で乾杯した。
「真哉、お前最近明るくなったよな?」
友雄は何気なく切り出した。
「何かいいことでもあったのか?」
あった。俺には奇跡が起こった。だがそれを話したとしても、信じるはずがない。頭がおかしくなったと思われるだけだ。
「別に、何もないよ」
「隠すなよ。何かあったって、その顔に書いてあんだよ」
気のせいだよ、そう言って左手を振った。
「今月の業績よかっただろ? それでか? 来月の給料には、インセンティブも出るんじゃないのか?」



