「何をそんな神妙な面持ちで話されているんですか?」
俯くわしと、困った顔でそれを見つめる斎藤のもとにやってきたのは、同じく近所に住む加藤だった。酒好きな男は、ビール瓶を片手に持ち、すでに頬を真っ赤にしていた。酔っているため、二人の緊張感が伝わらなかったのだ。
「加藤さん、今はちょっと……。後でお酒をお持ちいたしますので」
「何を言っている。ここは宴会の席ですよ。それとも、誰かの通夜でしたか?」
豪快な笑い声を上げる加藤を制しようとする斎藤を、わしは遮った。
「いいんじゃ。加藤さんの言うとおり、今は宴会じゃ。通夜のような面をしていた、わしが悪いんじゃ」
そう言って、加藤のグラスにビールを継ぎ足した。
「いやいやこりゃ失敬。それにしても旅はいいですな。美味いものを食え、好きな酒を好きなだけ飲め、俗世間のことなど全て忘れられる」
加藤は満足そうにグラスの中身を喉に流し込んだ。



