わしが時を進めた先は、一週間後だった。なぜそんな短時間しか時を進めなかったのか、それは老人会の旅行に参加するためだ。老体に鞭打ち、何度も自宅を訪ねてくれた知人のために、天国で暮らす妻のために、自らのために、光彦のために、旅行に参加することを決意した。
久々に吸う外の空気、様々な効能を謳う温泉、豪華な食事、老人同士の他愛もない会話、それらに心は洗われていった。隠居を迎えた人々が静かに余生を歩む日々。忘れていた日々。失った日々。今この瞬間だけでも、その雰囲気に身を委ねていたかった。
「源蔵さんが来てくれまして、みな安心しておりますよ」
オレンジジュースの瓶を片手に話し掛けてきたのは、わしを気遣い、何度も訪ねてきてくれた斎藤だった。



