Time is gone

「お孫さんは、きっとおじい様を恨んでなどいないと思います」
 わしの話を聞き終えた陽子は、毅然とした態度でそう言い放った。
「私がその時計を所持していたのは一週間くらいですが、私の人生を変えてくれました。一度踏み外した人生を、やり直す切っ掛けを与えてくれました。風俗を辞め、家も引き払い、新天地を求めこの地を選んだのは、きっと偶然ではありません。私とおじい様を巡り合わせるために、その時計が一役買ってくれたのでしょう。その時計を持つおじい様の姿を見たときから、私はそう思っていました。そしてこんな日が来ることを、予期していました」
 世間は意外と狭いものですね、陽子はそう笑い、続けた。
「話が前後してしまいましたが、私はその時計の力によって、まともな人生を再び歩み始めました。あのコンビニで働きだし、名ばかりですが、店長としてお店を任されるまでになりました。その間に常連のお客さんと知り合い、一度は結婚もしました。風俗で働いていた過去を、彼は受入れてくれました。……ですが、心の底からとはいかなかったのでしょう。それが原因で離婚することとなりました。彼はそれが原因ではないと言い張りました。ですが、私には分かっております。優しい人でした、それを認められなかったのでしょう。私は彼の申し出を断りませんでした。人生の付けが回って来たのですから、仕方がありません」
 陽子は一息吐くように、お茶をすすった。