十分後、着替えを終えた女とわしは歩き出した。喫茶店でも行こうかと思ったが、わしの家に向かうことにした。誰かに話を聞かれたくはなかったし、だからと言って女性の家に上がり込むのも気が引けた。外は暑い。消去法で、わしの家へと決まった。
「始めまして、と言っても何度も顔は会わせておりますが。私は、鈴木陽子と申します」
わしもまた、自らの名を名乗った。
「あなたはわしの孫、光彦からこの時計を譲り受けた、そうじゃろうか?」
陽子は頷いた。
「その経緯を、話してはいただけないじゃろうか? ……孫が、あの子が最後に話をしたのは、きっとあなたなんです」
最後、その言葉が引っ掛かったのだろう、陽子は眉をひそめた。わしは重い口を開き、光彦の現状を説明した。



