Time is gone

「……まさかわしの体には、この『ウラシマ効果』という現象が、起こっているのか?」
 時計のリューズを回すことにより、光速で時を進めてきた。わしの心と体だけが、光速で動いていたことに等しい。
 時計の隠された能力として、老いを免れていたわけではない。時計にそんな能力はない。自然の摂理によって、わしの体は老いを免れていた。十年の歳月は確かに経過した。だがわしの体は、一年しか経過していなかったことになるのだ。
「わしは一体、後どれだけ時を進めたら死ねるんじゃ? 十年? 二十年? ……どれだけ時を進めても、それは周りの時が進むだけで、わしの体は時を進めない。この体は、老いない、死なない……。周りの者だけが死に逝き、わしだけが一人残される。今以上の孤独が、待っているだけなのか……」
 わしは絶望の底にいた。唯一の希望、奇跡の時計からも、見放されてしまった。
「光彦、お前はわしを救うためにこの時計を与えたのではないのか? やはりわしを、恨んどるのか? ……そうじゃ、わしは決して許されることない罪を犯してしまったんじゃ。その復讐として、この時計を与えたんじゃな。そうなんじゃな、光彦。すまん、すまん……」