五年経とうとも、光彦は相も変わらず眠り続けていた。二十三歳、一年浪人したとしても、本来であればキャンパスライフを謳歌し、友情や恋愛にうつつを抜かし、ときにそれらに悩んだり、苦しんだり、中々もらえない内定に悔しんだりしていたはずだ。だが光彦は、一人眠り続けていた。
それでも五年という月日は、光彦に変化をもたらしていた。最近、急に髭が濃くなってきたのだ。脳は眠ったままでも、体は生きている。肺は酸素を求め、血や肉は栄養を求め、必死に心臓を動かしている。そして男性ホルモンは、光彦を少年から青年に、そして大人へと変化させていた。
それなのに、脳だけは眠り続けていた。
光彦の心は、一体どちらを求めているのだろうか。体が生きることを望む気持ちの象徴であり、脳が死を求める象徴なのだろうか。その答えは誰にも分からない。光彦自身、今もそれを迷い、眠り続けているのかもしれない。



