一人自宅に帰り着いたわしは、さっそく時計を掴み、居間に向かった。そして時計をテーブルの端に置き、中央に封筒と便箋を用意し、筆を取った。
封筒には先ず、「遺書」と書かれた。
その内容は、銀行の預金額と暗証番号、そして通帳の場所が書かれ、続いて加入している生命保険と受取人、残された家や土地の処分方法などが書かれた。そしてその全てを、光彦の治療費に充てるよう。
文字を書き進むに連れ、わしは光彦の気持ちが、徐々に分かり始めた。
死を求める、気持ちが。
わしもまた、死を求めている。そのために時計を利用しようとしている。いわば、自殺しようとしているようなものだ。だからこそ、同じように死を求めた光彦の気持ちが、分かり始めていた。



