Time is gone



 翌朝目覚めると、体の痺れからは解放されていた。だが、目に映る全てが色褪せていた。心の痺れが癒えることは、一生ない。
 自宅に一人帰ろうとするわしを、景子は必死になって引き止めた。
「お義父さん、やっぱり私たちと一緒に暮らしましょう」
「景子さん、すまん。気持ちは嬉しいが、それはできんのじゃ」
 それでも景子は引き下がらなかった。昨日の荒れようを見れば、誰でもそうしただろう。それほどまでに、わしの行動は常軌を逸していた。
 だがわしは、景子の申し出を断り続けた。今までのようにぞんざいな断り方ではなく、丁重に。光彦が植物状態人間と化した非は、景子や辰雄にもある。だが、一番の非が己にあることを知った今、今までのような態度を取り続けられるはずもなかった。