Time is gone

 光彦のことを話しても、時計のことを話しても、誰も信じはしないだろう。わしが光彦の言葉を、信じられなかったように……。きっと呆けたと思われ、強制的に引き取られるのが落ちだ。これ以上辰雄に、景子に、負担を掛けるようなことはできない。わしはこの罪を背負い、一人死んでいくのだ。後二・三年もすればこの寿命は尽きる。その間、一人この十字架を背負い生きていくことが、せめてもの罪滅ぼしになるのだ。
 後二・三年、たった二・三年が、わしにとっては永遠のように思えた。
 時を、戻せたら……。光彦の言葉を信じ、大学受験失敗を励まし、すぐに帰すような真似をしなければ……。いや、もっと前だ。辰雄たちと口論になった晩、何が何でも受験に反対していれば、引きずってでも光彦を連れ帰っていれば……。時を、戻せたら。
 時を進められるのであれば、その逆も……、そう思ったが、すぐにそれはないと悟った。光彦は時を進められる、そうは言ったが、その逆は言っていなかった。
 今なら、お前の言葉を信じられる。