その日、いつになっても起きて来ない一人息子を心配した母親の景子は、恐る恐る子供部屋の扉を開いた。そして目を疑った。そこには、勉強机に突っ伏し、真っ青な顔をした一人息子の姿があった。周りには風邪薬の箱と、様々な模様の空き缶が散乱していた。
すぐに救急車は到着し、蘇生処置が施されたが、時はすでに遅かった。若さゆえの生命力により一命は取り留めたものの、脳へのダメージが酷く、二度と目を覚ますことはない、そう医師から宣告された。
風邪薬を服用していなかったことが幸いと告げられて、何の慰めになるだろうか。不幸中の幸いと呼ぶには、あまりにも悲しい結末だった。
そして両親、わしと妻の心をもっとも痛めたのは、光彦が植物化状態人間と化したことではない。光彦が自殺をしようとしていたという、疑う余地のない事実だった。そしてその窮地に追い込んでしまったのが自分たちであるという、絶望感だった。その重圧に耐えられず、妻はこの世を去った。



