自宅に帰り着いたわしは、ドライバーなどの工具一式を片手に、時計と対峙していた。どうにか直し、その本来の役目、時を刻むという能力を取り戻させてやりたかった。そうすれば、止まった時が再び動き始める……、そんな気がしたのだ。
だがどこをどう見ても、ネジ穴一つ見つからなかった。わしに時計の知識があるはずもなく、開けて中身を確認することすら叶わなかった。
「しょうがない、明日、時計屋に持って行くとするか。ちゃんとリューズは回るし、針もそれに応えて……」
そのとき、わしの脳裏に様々な光景が広がった。風呂に入り眠り、朝一番時計屋に向かい、時計屋の主人からも修理不能と告げられ、意気消沈して家路に着くまでの光景が。
「なっ、何が起きたんじゃ?」
その謎はすぐに解けた。光彦の言葉が脳裏をよぎったのだ。
「この時計はね、時を自由に進めることができるんだ。どう、すごいでしょ?」
わしは立ち上がり、家を飛び出した。



