Time is gone

「そんな価値のあるものじゃない。壊れているし、聞いたこともないメーカーだ。引き取るつもりはなかったんだが、どうしてもと懇願され、人助けだと思い、十万で引き取っただけだよ」
「分かった。すぐに十万持ってくる」
 出口に向かい大股で歩き出したわしを、店主は呼び止めた。
「待ってくれよ源蔵さん。言っただろ、人助けで引き取ったと。だから十万も取る気はないよ」
「ではいくらだ!」
「一体どうしたんだね? それが何だと言うんだ?」
 わしは躊躇いつつも、口を開いた。
「この時計は……孫が、孫の光彦が持っていた、時計なんじゃ」