Time is gone

「オイッ、これはどうしたんじゃ!」
「急に大声を出さんでおくれよ。危うく三途の川を渡るとこでしたよ」
「ナンセンシュな冗談を言っとらんで、さっさと答えんかい!」
「源蔵さん、それを言うならナンセン……」
「これをどうしたのか聞いておるんじゃ!」
 わしのただならぬ様子に、店主は眉をひそめた。
「数ヶ月前に若いおなごが来て、どうしても引き取ってもらいたいと頼まれてな……」
「いくらじゃ! いくらで引き取り、いくらで売るつもりじゃ!」
「どうしても十万必要だから、十万で引き取ってくれと……」
「では十五万か? 二十万か? いくらで売るつもりじゃ!」
 わしの勢いにも押されず、店主はやれやれと首を左右に振った。