四十九日、その日を迎える頃には、一人での生活にも慣れ始めていた。一通り遺留品の整理も終わり、見よう見真似ではあるが、料理にも挑戦し始めた。妻が生きていた頃に比べれば、整理整頓は行き届いてはいないだろうが、わしなりにそれらもこなした。老体には堪える作業の連続ではあったが、己で決めたことだ、そう言い聞かせ、それらに励んだ。
四十九日とは、死人が天へと向かうと共に、残された者が元の生活に戻って行くための、準備期間でもあるのかもしれない。
法要を終えて帰宅したわしは、一人居間に腰を下ろし、改めて部屋の中を見回していた。
ばあさんは、もういない。この家にも、この世にも……。
いまさら感傷に浸ることでもない。それなのになぜか、今になってそのことが身に染みた。わしはこの世の中に一人、取り残されてしまったのだ。
タイミングを見計らったかのように、次のニュースです、画面上のアナウンサーはそう告げ、画面は切り換えられた。
「都営アパートの一室で、白骨化した遺体がみつかりました。遺体は死後一ヶ月は経過していると見られ……」
他人事ではない。明日は我が身……。
孤独死、その一言が心の中に響き、不安をあおる。



