息子夫婦がわしの家を訪ねてきたのは、それから三日後のことだった。
「父さん、僕たちと一緒に暮らそう」
「そうですよお義父さん。部屋も用意しました。だからお願いです」
 息子夫婦は開口一番、そう言い放った。
「わしはこの家を出るつもりはない」
「まだそんなこと言っているのかよ。いい加減にしてくれ。この部屋の有様を見ろよ」
 居間には、弁当の空き箱や空のペットボトル、レトルト食品やカップ麺の容器などが散乱していた。
「その歳になって一人暮らしを始めようなんて、無理なんだよ。母さんはもういないんだぞ。こんなものばっかり食べていたら、体にもよくないだろ。それに掃除もしなきゃ、衛生的にもよくない。この数日でこの有様だ。もう意地を張るのは止めて、僕たちと……」
「うるさい! 葬式が終わってもやることは山ほどあるんじゃ! そっちが忙しくて、飯や身の回りにまで手が回らないだけじゃ!」
「ではせめて、それらが片付くまでは私たちのところで……」
「わしは一時であっても、この家から離れん!」
 嫁は溜息を吐き、口を開いた。