Time is gone

 俺はこの奇跡の時計をどう利用するか、その一点に全思考回路を集中させた。だが中々いいアイデアは浮かばない。時を戻すことができれば、その利用方法は無限と存在する。万馬券を当てて大金持ちになることも、預言者になることも、人生をやり直すことさえもできる。だが結局、この時計は時を進めることしかできない。
 気が付けば一時間が過ぎていた。その間に浮かんだアイデアは、たった一つだけだった。
 仕事の時間を飛び越える。
 今思い付く限りで一番有効な利用方法がそれだ。もう朝の通勤ラッシュからも、暑い中の外回りからも、暇を持て余した中年主婦に頭を下げることからも、売り上げ成績に関する課長の嫌味からも、全てのストレスから解放される。その全てがアッと言う間に過ぎる。それだけではない、わずらわしいことは全て、時を飛び越えてしまえばいい。