借金をしてまで、体を売ってまでして集めたシャネルのコレクションたちが、呆気なく金に変わった。九十万、大金ではある。だがその代償に比べれば、あまりにも安い額だ。それでも私は、晴れ晴れとした気分でいた。
「なんであんまものにこだわっていたのかしら? バカみたい。……いえ、バカだったのよ。ブランド品という名の鎧を身に付け、私は私自身が輝いているように見せていた。もちろん、それは見せかけだけの輝き。そんなことにも気付けずに、その見せかけの輝きに心を奪われ、支配されてしまった。本当に、バカな女だった」
私は自らを嘲笑った。昔の自分を。
「そんなことよりも後十万! どうにかしなきゃ!」
先日振り込まれたばかりの給料には、ほとんど手をつけていない。それでも今月分のカードの支払いと、借金返済で三十万は消える。今のマンションの家賃は掛からないとしても、残りは四十万ちょっと。新しい家を借りるための費用と、引越し代、当面の生活費を考えると、それには手を付けたくなかった。



