Time is gone



 一人になった部屋。私は泣き続けた。一人が寂しかったわけではない。愚かな己を憐れんでいたわけでもない。悔しかった。他でもない、自分自身が。悔しくて悔しくて、泣き続けた。
 閑静な住宅街に佇む高級マンション。防音加工もしっかりされている。涙は枯れても、私は泣き声を上げ続けていた。その声以外は、野ら猫の鳴き声一つしない。この世界で唯一の響き。それは世界中に響き渡っているのではないか、そんな気がして、私はテレビの電源を入れた。
 そこには巨人対ヤクルトの、オープン戦の結果が映し出されていた。結果は十対二で巨人の勝利。試合が決まったのは八回裏。入団四年目、育成枠から這い上がってきた選手の、逆転代打満塁ホームランだった。それを機に、巨人軍のバットは火を噴いた。
「随分と、離されちゃったわね……」
 私は誰にともなく呟いた。枯れ果てたはずの涙が、再び溢れ始めた。