Time is gone

「私は時給八百円でいい! 真っ当に生きたいの。……戻れないのはトシ、あなたでしょ? 時給八百円で働きたくないのは、あなたでしょ? 私はもう、あなたを養ってはいけない。あなたを養うために、またあんな店で働くことはできない!」
 ……女が。
「えっ?」
「キチガイ女って言ったんだよ!」
 真っ当に生きようとすることはキチガイ。だったら、今までの私は何だったのだろうか。正常だったのだろうか。違う、この男がキチガイなのだ。
「もう、お前には利用価値がねぇな。コンビニで、弁当でもチンしてろ」
 男は不敵な笑みを浮かべていた。
「利用、価値? ……何よ、それ」
「利用できる価値だよ。金がなけりゃ、お前なんて単なる娼婦だ! させ子だ! この淫乱女が!」
 トシが金目的であることは、分かっていた。愛情なんてものが、とっくの昔に枯れ果てていたことも分かっていた。だが、娼婦、させ子、淫乱女、そんなふうに思われていたとは、夢にも思わなかった。