Time is gone



 どうやって帰って来たのか、覚えていない。ただ、気が付けば自室の扉の前に立っていた。その鉄の扉を押し開くと、キイーンという鼓膜を突き刺すような音が襲った。
「何だよ、急に帰ってくるなよな! ビックリするだろ!」
 トシは慌てて立ち上がり、ステレオコンポの電源を切った。
「トシ、私……首になっちゃった」
「あっそう。じゃ、ちゃんと次の店を探せよ」
 男は何食わぬ顔で言った。
 違うの……、そう言って私は、店で起きた一連の出来事を話した。
「ねぇっトシ、お願いだから働いて。私はもう……あんな店では働けない」
 私は泣いていた。
「疲れてんだよ。それと久々の出勤にも関わらず、一人目の相手が悪かった。それだけだよ。ちょっと休んで、それから新しい店を探せよ。今まで散々やってきた……」
「そうじゃないの! 私の体が、心がもう、あんなことは受け入れられないの! あんなこと二度としたくないの!」
 トシは呆れたと言わんばかりに、首を左右に振った。