Time is gone

「君、どうしたの！　今日が、初出勤？　緊張しているの？　大丈夫だよ、優しくするから、ね？　嫌がるようなことは、しないから、ね？」
　肉塊は私の下に駆け寄り、肩に手を置き、日本語で何度も呼びかけた。
「触らないで！　……そんな汚い手で触るな！　私に触れていいのは、私が選んだ王子様だけなのよ！　そのために、そのためにずっと綺麗な体でいたんだから……。あんたみたいな肉塊が、触れていい体じゃないのよ！」
　私は肉塊の一部を振り払い、睨み付けた。肉塊はその場で転がった。私の嘔吐物にまみれながら転がる肉塊は、餡かけミートボールのようだった。
　騒ぎを聞きつけた店長が、扉を押し開け入って来た。そして床一面に広がる嘔吐物を見て、顔を引き攣らせた。
「お客様、一体何が起こったのでしょうか？」
　ヤクザかぶれのドスの効いた声。私が酷いことをされたと、勘違いしたのだろう。ミートボールは自らに非がないことを、死に物狂いで説明した。