久々に歩く歌舞伎町。
ど派手で、汚い……まるで私のようだ。
私は苦笑いと共に、店の扉をくぐった。
事務所に行き、店長に頭を下げ、化粧を直し、着替え、指名を待った。
私はやっぱり、指名される側の人間なのだ。
そんなことを考えていると、さっそく指名を受けた。使い慣れた黒のシャネルのバックを持ち、客の待つ個室へと向かった。
蛇に睨まれたウサギが、威嚇としてするスタンピングのようなノックをし、ドアノブに手を掛けた。今までに何十回何百回と押し開いてきた扉は、錆び付いているかのように重かった。
この先に待つ世界は、私の戻るべき世界。そして、私の知らない世界……。
私は異界へと繋がる扉を開くように、ゆっくりと扉を押し開いた。



