Time is gone

 セックス、それは今回の交渉のお膳立てだ。そこで二年間の空白を埋め、さらには男の中身を空っぽにする。一度射精した四十代の男など、痴呆老人のようなものだ。幾多の荒波を乗り越えてきたやり手社長を交渉の舞台に上げるには、セックスは必要不可欠だった。覚悟していたにも関わらず、私は緊張していた。
「どうしちゃったのよ陽子! しっかりしてよ!  これじゃまるで……」
 心の準備をする間もなく、シャワーの音が止んだ。ガウンを羽織った男が姿を現す。次は、私の番だ。
 時間をかけ入念に体を洗った。男を焦らすためのテクニック……今まではそうだった。射精したくてしたくてパンパンに股間を腫らした男が、浴室の扉を開けて様子を窺いに来るまで我慢させる……という、男を虜にするためのテクニック。
 シャワーを浴び終えた私を、男は新たなワインボトルと共に迎え入れた。昔はこれが、お互い準備OK、のサインだった。もてる男はそんな些細なことも忘れない。