Time is gone

 再会を果たした私たちは、銀座の街へと繰り出した。そして食事を済ませ、再びホテルへと戻った。妻子持ちの男とは、このホテルで何度か逢瀬の晩を過ごした。いわゆる思い出の場所だ。だがそこに愛執が漂っているはずもなかった。そこには遊びと金という、お互いの欲望を満たすべき感情しかなかった。
 部屋へ入るなり男はルームサービスを頼んだ。フランス産の、二十年物の赤ワインのボトルと、チーズの盛り合わせに生ハム。もてる男は、何年前の女であろうとその好みを忘れない。
 他愛もない会話。私は適当に相槌を打ちながら、ひたすらワイングラスを口に運んだ。適当だが、決して相手を不愉快にさせない、クラブで働いていた頃に身に付けた究極の相槌テクニック。男共の自慢話を永遠と聞かされていては、気が狂ってしまう。正気を保つために身に付けた、自己防衛機能だ。
 一本目のボトルが空いたことを合図に、男はシャワーを浴びに立った。