Time is gone



 夜八時四十五分、待ち合わせの銀座プリンスホテル。約束の時間よりも早く着いてしまった私は、ロビーのソファーに座り、出入りを繰り返す人々を眺めていた。
 みな幸せそうで、高級ホテルに泊まれるだけのお金がある。
「変わってないな、陽子」
 不意に声を掛けられ、私は我に返った。目の前には第二の交渉人が立っていた。ずっと出入口を見ていたにも関わらず、その姿に気付けなかった。男は二年前に比べ、腹が多少突き出し、白髪が増えてはいたが、決して気付かないほどの変貌を遂げていたわけではなかった。
「……あなたこそ、変わってないわ」
 戸惑いを隠さず、上手く笑顔を作れていただろうか。