Time is gone

「面白い話だ。だがプレゼンする相手を君は間違えたようだ。その話を小説にでもして、出版社に送りたまえ。できあがったら編集部の人間を個人的に紹介しよう。自費出版するなら、その資金援助をしてもいい。だから今日はこれでいいかな?」
「信じて欲しいとは言いません。ですが一度、この時計のリューズを進めたい時間まで回してみてください。それで何も起こらなければ、頭の狂った女に無駄な時間を割いたと、梨花さんをせめていただいて結構です」
 私はそう言って、男に時計を握らせた。
「中々強引だね、君も。分かった、言う通りにしよう。明日の夜九時から楽しみにしているイベントがあるんだ。できれば今すぐにでも参加したいくらいにね」
「今が八時十五分で、時計の針は七時五十分を指しております。お手数ですが、その時計が明日の八時五十分をさすまで、リューズを回していただけませんか? 楽しみにされておりますイベントの開始十分前に、アッと言う間に到着です」
 男は、やれやれ、といった様子で首を左右に振り、時計のリューズを回し始めた。
 大丈夫、この日のために何度も時計の能力を試した。そして、結果は百パーセント成功だった。