運命の日、私は入念に化粧をし、全身をシャネルで包み、成城にあるIT会社社長の邸宅に向かった。
「始めまして、鳴澤です。君が陽子さん? 梨花から話は聞いていたが、想像していたよりもずっと綺麗だ。君にはあの娘たちにはない余裕が感じられる。何でだろうか? 何でだろう? まぁそれは後でゆっくりと考えるとしよう。で、要件と言うのは? こう言っては何だが、時間はあまりないんでね」
よく喋る男だ、それが第一印象だった。元々の性格なのか、忙しさがそうさせるのか……、そんなことはどうでもいい。
「貴重なお時間をわざわざ割いていただき、ありがとうございます。もう少しお話を楽しみたいとこですが、単刀直入に申し上げます。これはビジネスです。私はあるものを購入していただきたく、お邪魔させていただきました」
「ほう? で、そのあるものとは?」
男は楽しんでいた。私のような輩は、腐るほどいるのだろう。今日はどんなものを見してくれるのか、それを楽しんでいるようだ。
「これです」
私はシャネルの新作バックから、時計を取り出した。それを見た男は眉間に皺を寄せ、私と時計を交互に眺めた。



