Time is gone



 失意の中を彷徨っていた。余計な期待を抱いてしまったからこそ、その反動がカウンターとして返って来たのだ。すでに涙も枯れてしまった。そして枕が乾ききった頃、一筋の光が射した。
「この時計は時を自由に進められる。なら、時を戻せなくとも利用方法はあるじゃない? 奇跡の力を持った時計なら、欲しがる人間は腐るほどいるわ! 何百万、何千万、いえ、人によっては何億という大金を積んででも、欲しがるはずよ!」
 億、それだけの大金があれば、借金完済など屁の河童だ。働く必要もない。好きでもない男につくすこともない。好きなシャネルのバックもドレスもサンダルも、みんな買い放題だ。 
「……さっそく、買い手を探さなくちゃ」
 私は携帯を取り上げ、アドレス帳を開いた。そして六本木のクラブで働いていた頃の上客をリストアップしていった。
「十人かー。でも二年も前の客だしなー。この不景気だし、みんなどうなっていることか……。……そうだ、あの子はどう? まだあの店で働いていれば、金持ちの知り合いはたくさんいるはずよ!」 
 私は迷うことなく、その番号を押した。