Time is gone



「寝たのか? 寝るなら風呂に入ってから……」
 父親の声……、であったとしたら、どれだけ幸せだっただろうか。「パパ!」と叫び、その胸に飛びついただろう。
 だがその声は、私に絶望をもたらすだけだった。
 時は、戻らなかった。
 よっこらせ、そう言ってベッドに潜り込んできたトシを、私は突き飛ばした。
「何すんだよ! 危ねぇじゃねぇか!」
「あんたなんか床で寝ればいいのよ! 私のベッドなのよ、我が物顔で入ってこないでよ!」
 私は泣いていた。そのただならぬ形相に、トシは舌打ちしただけで、黙って部屋を後にした。
「バカじゃないの! みんなバカばっかり! あの居候野郎も、妙な時計を渡してきたあのガキも、みんなバカだ! 何が私の役に立つよ? 嘘ばっかり! 私は時なんて進まなくっていい! 歳を取って皺が増えるだけじゃない! ……私は、時を戻したいのよ」
 私は枕に顔を埋め、泣いた。戻ることのない時を、愚かな己を、呪い。