彼は去り際、昔の飾らない君が好きだった、そう言い捨てた。彼は王子様だった。だがそれは、しょせん田舎の王子様でしかなかった。
最初の借金は数万円だった。大した金額ではない、夢を叶えるための先行投資、次のオーディションで役を得られればすぐに返済できる、安易にそう思っていた。だがそれは、借金を返すために新たな借金をし、カードの支払いをするために借金をするという、悪循環にはまる最初の一歩だった。
堅実な両親に相談できるはずもなかった。相談していれば、借金は無くなっただろう。だがこれ以上東京という地に留まることは許されなかったはずだ。そんなことは許されない。夢半ばにしておめおめと山奥に戻れば、いい笑い者だ。プライドがそれを許さなかった。
私はキャバクラで働き始めた。転落人生の、坂道を転がり始めた瞬間だった。
最初の借金は数万円だった。大した金額ではない、夢を叶えるための先行投資、次のオーディションで役を得られればすぐに返済できる、安易にそう思っていた。だがそれは、借金を返すために新たな借金をし、カードの支払いをするために借金をするという、悪循環にはまる最初の一歩だった。
堅実な両親に相談できるはずもなかった。相談していれば、借金は無くなっただろう。だがこれ以上東京という地に留まることは許されなかったはずだ。そんなことは許されない。夢半ばにしておめおめと山奥に戻れば、いい笑い者だ。プライドがそれを許さなかった。
私はキャバクラで働き始めた。転落人生の、坂道を転がり始めた瞬間だった。



