Time is gone

 高校卒業と共に私は上京した。堅実な両親とは一悶着あったが、四年という期限付きで許された。その四年は、とっくに過ぎてしまった。
 上京した私を、彼は快く迎えてくれた。……そう思っていた。だからこそ、慣れない環境と生活にも耐え、様々なオーディションを受けて回った。
 両親からは若干の仕送りをもらっていたが、もちろんそれだけでは生活できなかった。だから事務所が持ってきた仕事は、コンパニオンでも何でもこなした。水着になれと言われれば水着になったし、オタクのためのイベントであれば、わけも分からないアニメのコスプレもした。
 舞台やドラマ、映画のオーディションは腐るほど受けた。それなのに、結果はいつも……。
 人生初の挫折。いや、私はそのとき気付いてしまったのだ。井の中の蛙でしかなかったこと、猿山のボス猿でしかなかったことに。
 周りを見渡せば、私以上に可愛い子、綺麗な子、スタイルのいい子、おしゃれな子、演技力のある子たちで溢れていた。ここは山形の山奥ではなく、日本中の人々が集まる大都会、東京だと思い知らされた。