彼は野球部で鍛えられた根性と、努力を惜しまぬ真面目さを兼ね備えていた。公務員の父を持つ私としては、正に王子様だった。
だが彼は、私の前から去った。
私ではなく、東京の大学を選んだ。甲子園までは後一歩というところで届かなかったが、その活躍が認められ、東京の大学へと推薦入学したのだ。
旅立ちの日、一年間待っている、彼はそう言い、私は頷いた。
私の頭はあまりよくなかった。彼のように、何か能力に長けているわけでもなかった。ゆえに、進学という選択肢は鼻からなかった。それでも人一倍優れたもの、美しさがあった。さっそく写真とプロフィールを送り、小さな芸能事務所に所属した。
芸能界への憧れは幼い頃からあった。幼稚園、小学校、中学高校と、学芸会や演劇界があれば必ず主役かヒロインだった。もっと多くのスポットライト、観客を……、そう願うことは、必然的な結果だったのかもしれない。
だが、不安はあった。厳しい世界で生きていけるのか……、というそれが。彼の上京は、それを後押ししたに過ぎないのかもしれない。
だが彼は、私の前から去った。
私ではなく、東京の大学を選んだ。甲子園までは後一歩というところで届かなかったが、その活躍が認められ、東京の大学へと推薦入学したのだ。
旅立ちの日、一年間待っている、彼はそう言い、私は頷いた。
私の頭はあまりよくなかった。彼のように、何か能力に長けているわけでもなかった。ゆえに、進学という選択肢は鼻からなかった。それでも人一倍優れたもの、美しさがあった。さっそく写真とプロフィールを送り、小さな芸能事務所に所属した。
芸能界への憧れは幼い頃からあった。幼稚園、小学校、中学高校と、学芸会や演劇界があれば必ず主役かヒロインだった。もっと多くのスポットライト、観客を……、そう願うことは、必然的な結果だったのかもしれない。
だが、不安はあった。厳しい世界で生きていけるのか……、というそれが。彼の上京は、それを後押ししたに過ぎないのかもしれない。



