Time is gone

「TIG……聞いたことないな」
 試しにパソコンを立ち上げ、ネットで調べてみたが、いくらどう検索しようとも、TIGという懐中時計のブランドは見つからなかった。
 きっと小さな会社か、知る人ぞ知るオーダーメイド専門のブランドだ。いや、きっと後者だ。そうでなければ、この妖艶なまでの魅力は引き出せない。よっぽどの職人が、その精魂を込めて作った作品なのだ。一流の職人が手作業で作った作品には、その人物の魂が乗り移る。
 俺は時計を愛おしそうに撫で、壁の掛け時計に目をやった。
 一時三十五分、だな。
 時間を確かめると、ゆっくりとリューズを回した。長針と短針が、指の動きに併せて回る。その滑らかな動きは、まるで氷上のフィギュアスケーターのようだった。