高校時代、努力の甲斐もあり、都内でも有数の進学校に進めた。人生初の分岐点を、正しいとされる道を進めた……、はずだった。あの一件さえなければ、その道は今も僕の行き先を照らしていたかもしれない。高校一年生のときに起こった事件、父親のリストラ。心と体が急速に成長し、そのスピードに困惑していた僕にとって、それはあまりにショッキングな出来事だった。純情なキリシタンに、実はキリスト何ていませんでした、そう言ったら発狂し、二度と神に祈りを捧げないだろう。それと同じように、僕は信じていたものを失い、勉強することを辞めた。それからの日々は、祖父母の家に入り浸り、日が暮れるまで釣糸を垂らしていた。思い出という慈しむべき過去が、色を失った瞬間だ。そんな日々の中で時計を釣り上げ、一年強の時を飛び越え、今に至った。その間、勉強だけをしてきた。いくら釣糸を垂らしても引っかかりもしなかった何か、行き先を照らし出す光を求めて。
……そうか、僕はその光を求めて釣糸を垂らしていた。だからこそ、時計は僕を選んだのだ。でも奇跡の時計も、僕の行き先を照らし出しはしなかった。
……そうか、僕はその光を求めて釣糸を垂らしていた。だからこそ、時計は僕を選んだのだ。でも奇跡の時計も、僕の行き先を照らし出しはしなかった。



