Time is gone



 幼稚園に通っていた頃、その時代の記憶はあまりない。強いて挙げれば、若い保母さんに淡い恋心を抱き、バレンタインデーなのに逆にチョコを渡した記憶くらいだ。
 小学生の頃、その頃から記憶は断片的に存在し始める。と言っても、大したそれではない。終業の鐘と共に教室を飛び出し、友人とゲームをしたり、駄菓子屋に行ったり、エロ本を回し読みしたり、祖父と釣りをしていただけだ。今思えば、あの頃が一番自由だった。楽しかった。不安は席替えの際、どの子が隣になるかくらいで、不満は夕食のおかずと、少ない小遣いくらいだった。平和で、歳を重ねることが楽しかった。