Time is gone

「もしかして、初めて?」
 はい……、僕は蚊の鳴くような声で答えた。
「じゃ、お姉さんが優しくしてあげる」
 そう言って女は口付けしてきた。
 ファーストキス、それはロマンチックの欠片もないままに奪われた。それを嘆いているわけではない。この世の中には、大切に取っておかなくてもいいものはたくさんある。その中の一つを失っただけだ。
 柔らかい唇、ざらざらとして、塩を掛けられたナメクジのように動き回る舌。その感覚を味わう間もなく、それは僕を包んだ。十八年間、一度も感じたことがない、あえて例えるなら、温かいゼリーに指を突っ込んだような感覚。その中でナメクジが再び動き出し、僕をゆっくりと撫で回した。そして呆気なく、果てた。
 自慰行為では味わえない至福の快楽に、全身、特に尻の筋肉が震え、僕はなおも猛り立っていた。
「すごーい、一杯出たね。それにまだこんな元気」
 女は笑みを浮かべながら、僕を拭いてくれた。
「……あの、お願いが、あるんですけど」
 なに? 女は笑顔のまま首を傾げた。
「あの、その……」
 んっ? にこにことほほ笑む女に、僕は意を決して切り出した。
「淹れさせてもらえませんか!」
 女は笑顔のまま壁を指した。