「いらっしゃらいま……」
店内に足を踏み入れると、タキシードを纏った男性に迎えられた。その営業スマイルは、僕の姿を捉えるなり、苦笑いのそれに変わった。
「お客様、おいくつになられますか? 何か、年齢を確認できるものはございますか?」
僕は顔色一つ変えることなく、財布から一枚のカードを取り出した。
「これ、使えますか?」
その金色に輝くカードを目にしたボーイは、瞬時に態度を改めた。
「もっ、もちろんご利用いただけます。どうぞ、こちらに」
奥に通された僕は、胸を撫で下ろした。第一関門は突破した。
壁に貼られたいくつもの写真の中から一人を指名するよう言われ、その中の一枚を自然と指差していた。……何かに、操られたかのように。



