Time is gone



 帰宅を急ぐ人々、これから夜を謳歌するべき街を目指す人々。それらの人々を縫うように歩き、目的地へと向かった。途中、薬局を見つけた僕は、早足で店内を回り、二つの箱を手にし、レジを済ませ、そそくさと店を後にした。ビル風の冷たさに、二度、鈍い咳が漏れた。
 きらめくネオン、様々な人々に臭い。日本一の歓楽街、歌舞伎町。僕にとっては馴染みのない街であり、これからも調和することのない場所。様々な光を放つ看板の中で、一際目立つそれを掲げた店に僕は足を踏み入れた。通いなれた塾の自動ドアをくぐるときのように、自然と。ピンク色に輝くその店の看板には、「ストロベリーリップ」そう書かれていた。